第2回:「レトルト機の種類と規模別・機能別の選び方」

― 品質・コスト・流通の最適解を探す ―
レトルト機導入の悩みどころ
フルーツ農家や地域加工場がレトルト機の導入を検討するとき、最も迷うのが
- どの規模の機械を選ぶか
- どの方式(機能)を選ぶか
です。
レトルト殺菌は「温度・時間・圧力」を制御する技術。機械選びを誤ると、
- 投資が大きすぎて稼働率が低い
- 処理能力が足りず販売機会を逃す
- 熱ムラで品質にばらつきが出る
といった問題につながります。
ここでは、規模別・機能別のポイントを整理していきます。
規模別の導入適性
🔹 小規模(観光農園・直売所)
- 特徴:試作用・少量生産向けの小型レトルト釜
- 用途:
- 観光農園のお土産用ジャム
- 常温ギフト商品
- 季節限定商品を保存してオフシーズン販売
- メリット:導入コストが低く、販路拡大の“試金石”になる
🔹 中規模(地域加工場・EC販売)
- 特徴:バッチ式の中型レトルト機が中心
- 用途:
- ピューレ・ソース・ドレッシングなどECや業務用に展開
- 常温での在庫管理を前提にSKUを揃える
- メリット:常温一温度帯で物流が簡素化、在庫調整も容易
🔹 大規模(業務卸・輸出対応)
- 特徴:回転式や連続式、全自動記録機能を持つ大型機
- 用途:
- 輸出向けフルーツソース
- 大手業務用市場(製菓・外食チェーン)向け
- 防災備蓄市場
- メリット:大量処理・品質安定・HACCPや国際認証対応が容易
機能別の選び方
🔹 静置式 vs 回転式
- 静置式:ジャムやピューレなど粘度の高い食品に適合
- 回転式:固形物や粒入り製品でも熱が均一に伝わり、品質安定
🔹 加熱方式
- 蒸気式:汎用性が高く、多くの製品に対応
- 水浸式/スプレー式:熱の伝導が均一で、品質管理に優れる
🔹 制御・記録機能
- インバーター制御・省エネ機能:電気代削減、補助金の対象になりやすい
- 自動記録機能:HACCPや外部認証(JFS-B、FSSC22000)を見据えるなら必須
流通・在庫管理上のメリット
- 冷凍に比べ常温流通が可能 → 物流コスト削減、販路拡大
- 在庫保管が常温でOK → 冷凍庫・電気代の負担が大幅に軽減
- 賞味期限が長い → 在庫ロスを削減し、キャッシュフローを安定化
特にフルーツはシーズン性が強いため、レトルト化で**「仕込みは収穫期・販売は通年」**が可能になります。
食品安全面:ボツリヌス菌対策の強み
レトルト機は、ボツリヌス菌(芽胞菌)を死滅させられるレベルの加熱が可能。
冷凍や冷蔵ではリスクが残る場面でも、「安全性×保存性」を同時に確保できるのが最大の強みです。
- 121℃×一定時間(F₀値の設計)で芽胞菌を制御
- pH管理・水分活性調整と組み合わせて製品設計
- シール・充填・動線設計で再汚染防止
HACCPに沿った衛生管理とセットで導入することで、輸出や大手取引先への信頼性が高まります。
補助金を意識した機能選定
- ものづくり補助金:中〜大型レトルト機、充填・包装・金属検出機など一体的導入で高採択
- 省力化補助金:自動制御・記録・省エネ機能のあるモデルは対象になりやすい
- 6次産業化交付金:地域資源を活かした加工商品に最適
- 新事業進出補助金:常温ギフトや海外販路を狙う場合に有効
👉 「規模別の適正 × 機能の選択 × 補助金活用」の3点をセットで考えることが、失敗しない導入のコツです。
まとめ
レトルト機は「食品を常温保存可能にする」だけでなく、
- 流通・在庫の効率化
- 商品ラインナップの拡大
- 食品安全性の確保
- 補助金による投資回収の加速
といった多方面のメリットをもたらします。
👉 次回(第3回)は、「レトルト機導入と補助金活用の成功事例」をご紹介します。実際にどう補助金を組み合わせ、どのような商品戦略に結びつけるかを解説します。
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